日本の最も大切なものは森が守っている


(熊本県 幣立神宮の森)

三島由紀夫は
「日本人が最後に守らなければならないものは、三種の神器である」
と言ったそうです。

三種の神器は、天皇陛下の皇位継承の証です。

三種の神器は「八咫鏡(やたのたがみ)」
「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」
「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」です。

古事記の中で、瓊々杵尊(ににぎのみこと)の天孫降臨の際に、
天照大神(あまてらすおおみかみ)が授けたものとされています。

八咫鏡は、伊勢の神宮の内宮に祀られています。
また、その形代(かたしろ)が、皇居の中にある宮中三殿賢所(かしこどころ)の
真ん中のお社に祀られています。

草薙剣は、名古屋の熱田神宮に、
その形代(かたしろ)と、八尺瓊の勾玉は、
天皇陛下のお住まいの御所の寝室の隣にある
「剣璽(けんじ)の間」という部屋に
納められています。

ご縁があって、これまで三種の神器が祀られてある
皇居の内部、伊勢の神宮、熱田神宮に訪れました。
その3カ所の共通点は、いずれも大きな樹々が林立する
見事な樹林の中にある、ということです。

皇居の中でも、特に御所、宮中三殿付近の樹林は、
東京の中心部とは思えないほどの見事な、高木の樹林です。
この樹林の樹々は、普通ではありえないほどのスピードで
大きくなったのだそうです。

いずれの地も、ただ巨木が立ち並んでいるだけではありません。
その場に立つと、外界とは明らかに異なる
清涼な空気に満たされていて、ただならぬ土地の気配、
土地のエネルギーを感じます。
エネルギーが強いときは、頭痛がしたり、目眩がしたりします。

森の巨木達の力で、三種の神器の場所が守られているようで、
そこに立っているだけで、心身が清められていくような気がします。

そういえば、日本の国土の7割は森林で、
日本は世界有数の森林国です。
日本の国自体を森が守っているのかもしれません。

古事記を読んでみましょう。

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古事記を読みました。

古事記は、世界の創世から、日本の国の成り立ち、
皇室の由来が記された、国家が編纂した歴史書です。

古事記が記されたのと同時期に、同様の国家編纂の歴史書として
「日本書紀」が有名で、この2つを合わせて「記紀」といいます。

なぜ、同じに時期に2つの歴史書が出来たのかというと、
古事記は日本国内向け、日本書紀は海外向け、
つまり当時の中国向けに書かれたものだからです。

日本書紀は漢文で書かれているので、
中国の人にも読めますが、
古事記は、万葉仮名で書かれています。
万葉仮名は、日本語の音に合わせて、
一音一音に漢字を当てた表音文字なので、
文字だけを見ると意味が分かりません。

古事記はずっと昔から読まれてきた訳ではありません。
古事記の存在は知られていなかった書物で、
真福寺写本が発見されて、
江戸時代中期の国学者、本居宣長が40年かけた研究のおかげで、
今の私たちが読めるようになりました。

古事記なんて、難しそうと思って敬遠していましたが、
読み出してみると、どんどんのめり込んでしまいました。

日本の各地を旅行する際、伊勢や出雲など神社を訪れる際に
読んでおくと、「あ、この神様知ってる!」とか
「あの神話の関係のある場所なんだ」とか
楽しみも増えますよ。

古事記はいろいろ現代語訳の本がありますが、
こちらが読みやすく翻訳されていますのでおすすめです。

「現代語古事記 決定版  竹田 恒泰 」

和・輪・わ

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聖徳太子の十七条の憲法は、
「和を以て尊しと為し・・・」
という文から始まります。

憲法というのは、最も大事なことから書かれるものですが、
十七条の憲法では、「和」から始まっています。
この「和」が日本において最も大切なことだということですね。

「和」とはいったいなんでしょう。
これは、「けんかをしないで、みんなで仲良くしよう」
という意味ではありません。

「和」は和える(あえる)という意味で、
ぐちゃまぜに混ぜることです。

つまり、いろいろ異なる文化、意見、考え方を取り込んで
まぜこぜにして、より良いものをつくりだすことです。

昔から、物事を決めるときに話し合いによって決められてきた。
いろんな意見を出し合って、その中から答えを探し出し、
最適な結論が決まったら、みんなでそれに従う。

これが十七条の憲法で、最初に書かれた重要なことなのだそうです。

荒神谷遺跡の記事や天安河原の記事でも書きましたが、
聖徳太子よりずっと昔から、日本では話し合いによって
お互いを尊重しながら、いろんな文化や考え方を受け入れて
より良いものをつくろうとしてきたのですね。

「和」は、音にすると「わ」ですね。
日本には漢字が伝わるまで文字がなかった(と一般的にいわれている)ので
「わ」という音で発音していたものに
「和」という文字を当てたとも考えられます。

他に「わ」には「輪」という文字もあります。
「わ」と発音するときには、口の形は輪になります。

ここは勝手な想像ですが、みんなで円形に座って、
話しあいで意見を出し合って物事を決めている状態を
「わ」と言ったのかもしれません。

ところで、あまり知られていませんが、
この十七条の憲法は、17条の条文のものが5種類、
合計で85条あったそうです。
その5種類は神職、僧侶、儒者、政治家と公務員に向けたものでした。

写真は、2008年に国立新美術館の美術展に出展したときに制作した
インスタレーション作品「circle」です。

バリ島の宗教・バリ・ヒンドゥー

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写真:Jagat nata寺院

インドネシアのバリ島の宗教は、
バリ・ヒンドゥーというバリ島独特な宗教で
島民の大半が信仰し、生活、文化、習慣の基礎となっています。
インドネシア共和国は、国民の90%近くはイスラム教です。

バリ・ヒンドゥー教は、もともとバリ島にあった土着宗教に
インドから伝来したヒンドゥー教、仏教などの影響を受け、
インドのヒンドゥーとは違った独特の宗教になりました。

バリ・ヒンドゥーは多神教で、
すべてのものに神々が宿るという精霊信仰の考え方です。
日本の「八百万(やおよろず)の神」と似ています。

自然の中に神々が宿るというアニミズム的な信仰は、
もともと、自然からの恵みが豊富な地域で生まれたものです。

多神教はもともと世界各地にあったと考えれていますが、
欧米の植民地時代を経て、
今では、数少ない地域で残っているのみです。

日本も、土着の信仰(神道につながる)に、仏教が伝来して、
お互いに影響を与え合って、融合していきました。

日本もバリも、外来の宗教を排除しないで、
受け入れながら、独自に進化させてきたということが
とてもよく似ています。