聖徳太子の十七条の憲法は、
「和を以て尊しと為し・・・」
という文から始まります。
憲法というのは、最も大事なことから書かれるものですが、
十七条の憲法では、「和」から始まっています。
この「和」が日本において最も大切なことだということですね。
「和」とはいったいなんでしょう。
これは、「けんかをしないで、みんなで仲良くしよう」
という意味ではありません。
「和」は和える(あえる)という意味で、
ぐちゃまぜに混ぜることです。
つまり、いろいろ異なる文化、意見、考え方を取り込んで
まぜこぜにして、より良いものをつくりだすことです。
昔から、物事を決めるときに話し合いによって決められてきた。
いろんな意見を出し合って、その中から答えを探し出し、
最適な結論が決まったら、みんなでそれに従う。
これが十七条の憲法で、最初に書かれた重要なことなのだそうです。
荒神谷遺跡の記事や天安河原の記事でも書きましたが、
聖徳太子よりずっと昔から、日本では話し合いによって
お互いを尊重しながら、いろんな文化や考え方を受け入れて
より良いものをつくろうとしてきたのですね。
「和」は、音にすると「わ」ですね。
日本には漢字が伝わるまで文字がなかった(と一般的にいわれている)ので
「わ」という音で発音していたものに
「和」という文字を当てたとも考えられます。
他に「わ」には「輪」という文字もあります。
「わ」と発音するときには、口の形は輪になります。
ここは勝手な想像ですが、みんなで円形に座って、
話しあいで意見を出し合って物事を決めている状態を
「わ」と言ったのかもしれません。
ところで、あまり知られていませんが、
この十七条の憲法は、17条の条文のものが5種類、
合計で85条あったそうです。
その5種類は神職、僧侶、儒者、政治家と公務員に向けたものでした。
写真は、2008年に国立新美術館の美術展に出展したときに制作した
インスタレーション作品「circle」です。